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その夫婦には、小学校にあがったばかりの六歳になる娘がいた。
幸せを絵に描いたような家庭だった。

ある夏の日、娘が交通事故に遭う。

悪いことはなにもしていない、
恨まれるようなことも、していない。

それなのに、なぜ私たちの子供が死ななければならないのか。
気が付くと、夫婦はこんなことばかり考えるようになっていた。

二人はどこへ向かっていくのか。
そして初めて抱いてしまった殺意のようなものは、どうすればいいのか。

交通事故で娘を失った夫婦の物語をやることにしてから、様々な資料や、インターネットで展開される遺族の方の文章に出会った。

そして愕然とした。彼らを苦しめているのは「事故なんて起こって当然」と考え、「演劇の題材として嘘臭くないだろう」と考えていた、つまりは、私のような人間なのだと。この体験が、この物語を支える一つの大きな柱となっている。

世界には、誰に対して怒っていいのか、その対象がはっきりしないことがある。奪われてしまったり、追い込まれてしまったり、殺意を抱いてみたりする。しかし、気持ちは晴れることはない。

それは、何も遠い国の話ではない。私たちの暮らすこの場所に、この物語が出会うのだ。