銀光りする熾烈な運命よ、
わたしたちの慈愛も罪も/おれたちの恨みも希望も、
有無を言わさずないがしろにしてしまうつもりか。

当日配布物

作品を発想する過程で、劇団のメンバーというのは(恥ずかしげもなく言うのだけれど)かけがいのない存在である。なにもそれは私だけのことではなく、同じ立場にある人であれば例外なくそう思うだろうし、もし思えないのなら、それは何かの終わりを意味すると思う。
そのことは揺るぎない事実なわけだけど、やはり長い間一緒にいると「慣れ」が生まれる。もちろんそのすべてを否定する気はない。人間同士だ。いつまでたっても慣れないというのも、それはそれでどうかと思うし、そういう人間どうしだからこそ、到達できる領域があるのも事実だろう。
今回、韓国からチョソンヒ君を呼んだ。彼は日本語ができないから、伝えたいことや、わからないことがあれば、演出家はもちろん共演者にも、しつこいぐらい疑問をぶつける。最初はメンバーも戸惑い気味で、特に俳優同士がお互いの演技に対して批評をするのは、なかなか難しいものがあるようだった。しかし稽古を積み重ねるうちに気付いたことがある。それはソンヒくんは、誰よりも「自分のことを理解してもらいたい」と思っているのだということだ。どんなに優秀な通訳がいたとしても、異なる国の人が、そのすべてを肌で理解するのは難しい。だからこそ、もっと自分のことを理解してもらいたいと思うし、できることなら、あなたのことも理解したいと思うはずだ、きっと。「慣れ」と呼んで、ときに批判してきた私たちの関係は、演劇という表現に関わるものの姿勢として、「慣れ」と一言で片付けるには、あまりに安易なものだった。
今回もいろいろな方の協力があって、この作品を皆様に届けることができました。お客様にはもちろん感謝していますし、それと同じくらい、この作品に関わった人たちにも感謝したいと思います。どうぞ最後までごゆっくりご覧ください。 

登場人物・配役                    
関根光子(大成館の女)・・・洪明花
関根澄子(光子の妹)・・・衣川真生
朴守相・・・安木一之
鄭龍山・・・チョソンヒ(韓国/清洲市民劇団)
渡辺文子(女学校教師/光子の幼馴染み)・・・高田愛子
佐竹(陸軍軍医)・・・山路誠
片倉(傷痍軍人)・・・東誠司
初枝(片倉の妻)・・・大野由美子
滝親方・・・北澤輝樹
前田(特高警察の刑事)・・・中村匡克

スタッフ                        
照明|福田恒子 
音響 | 三木大樹  
舞台美術 | 福田暢秀(F.A.T STUDIO)
衣裳|兼松光  
舞台監督|鳴海康平
宣伝美術 | 西村竜也  
宣伝コピー | 千葉広樹 
制作 | 河野悟・中村紗夢
稽古場通訳 | チェハノル  
台本翻訳 | 洪明花
演出助手 | 宍戸かなえ・古海裕子
協力 | 清洲市民劇団/atelier SENTIO
字幕協力 | 青年団   
字幕操作|古海裕子
主催 | ユニークポイント
助成|文化庁・東京都
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