ロゴユニークポイント公演 『水飲み鳥/溺愛』 2本立て上演
2011年1月18日(火)〜23日(日) 下北沢 「劇」小劇場

物語の再生と崩壊、妄想、または現実世界と、その嘘について考える2本立て
2009年、劇団の新人のために「水飲み鳥」書き下ろし、3都市で公演した。新人のためだけに芝居を作るのも、何だかもったいないので、これはいい機会だと思って、前々からいつか書いてみたかったものを書いた。しかも新人公演と銘打っておくと、評判がよければ「さすが山田さん」と言われるし、もし駄目なら「しょうがないよね、新人公演だし」となる。書きたいものを、肩の力を抜いて、サラーっと書く環境は整ったわけだ。こうしてできた作品が「水飲み鳥」であり、静岡でも広島でもそして東京でも、大変喜んでもらった。こういう機会は、数年に1度くらい訪れるが、できあがったものはストレートでシンプルで、愛着がわくものになることが多い。しかし、書きたいものを、書きたいように書いているだけなので、分量はさほど多くはない。このことは、私にとっての劇作の本質をついて、つまり、実は書きたいことなんて本当は微々たるものなのだ。私にとって「劇」を書くことは、大いなる仮説を立てることであり、私たちの世界の形を、俳優と一緒に形づくるための設計図なのである。すでにわかっていることや、私の中にあることを戯曲に落とし込み、発表することが、私の演劇活動ではないし、それは劇作家の仕事でもないと思う。さらに「水飲み鳥」は自伝的作品でもある。自分が体験し思っていることが、ひとつのモチーフとなっているので、作品としての器がいささか小さい。しかし先述したように、作品は結構気に入っている。したがって今回「水飲み鳥」を再演しようと思ったとき、まず考えたのが、もうひとまわり大きな器の存在だ。私という存在を「宇宙の中に存在する私」とか、人間を「あらゆる生命体の一員」とか言うように、もっと大きな世界の中に「水飲み鳥」を存在させることだった。演出や、美術や、空間構成などで攻める方法もあるだろうが、今回は作品に、さらに作品で明確な輪郭を与えてみようと試みた。その作品を「溺愛」と名付けた。「溺愛」が「水飲み鳥」を包み込むのだ。この試みが本公演の演劇的試みの、まずはひとつである。もちろん、2つの作品をばらばらに観ても楽しめるが、上演意図はこのようなものである。劇場で2つの作品を連続で観ることで浮かび上がる、個と個についての「劇」なのである。(チラシ掲載文章)

本日は寒い中、わざわざ足をお運びいただき、誠にありがとうございました。なんだか最近、戯曲を書くことが難しいなあと思うようになりました。というのも、何を書いても「所詮フィクションじゃないか」と思ってしまうからです。やがてその問いかけは、「物語とは何だろう」という根源的な問いかけにシフトしていったのです。2年くらい前からぼんやり考え続けているこの問いを、今回は2つの作品を並べて考えてみようと思いました。現時点で結論のようなものはありません。でも稽古をしながら、「物語」をどんなに否定しようと、私たちは必ず出会い、その中に生きているのだなあという思いが、ふつふつと、わいてきました。しかし同時に、嘘を塗り重ね、無理やりこしらえた物語の存在も、否定はできません。私たちにできることは、(矛盾するようですが)物語の嘘に気付くこと、本当の物語を創作すること、であるのかもしれません。最後まで、どうぞごゆっくりお楽しみください。(公演当日パンフ掲載)

照明/福田恒子 羽田勝博 音響/三木大樹 美術・舞台監督/鳴海康平(第七劇場)衣装/兼松光
宣伝美術/永井美奈子 倉田ゆりえ(enudesign) 演出助手/水田由佳 制作スタッフ/河野悟 中村紗夢 柴田瑛未里
小道具協力/浅香実津夫 撮影/渡辺健太 西池袋映像 受付/平岡彩子 制作協力/アトリエセンティオ 学習院女子大学舞台芸術部
協力/ (有)宝井プロジェクト A.C.O.A. 鵺的  文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別支援事業)

【開演時間】
18日(火) 19:30
19日(水) 19:30
20日(木) 15:00/19:30
21日(金) 19:30  
22日(土) 15:00/19:30  
23日(日) 13:00/17:30

【料金】
前売 3,000円 当日 3,300円 学割 2,000円 
はじめて割! 2,800円(ユニークポイントをはじめて観る方、およびはじめての方とご一緒にご来場される方が対象です)

公演写真



元同僚看護婦たちによる、連続保険金殺人事件をモチーフにした新作でした。人を束縛する、不自由に慣れる、嘘をつく、裏切られる、などのキーワードを抽出し構成していきました。物語と整合性からなるべく遠いところにいようと思ってはいたのですが、なかなかそうはいかずに、向こうから勝手にこちらに近づいてきました。何も先が見えない霧の中を恐る恐る進むしかなかった。寒い稽古場で、薄着で過ごした女優陣の奮闘に感謝します。



2009年に上演したものの、再演です。台本は少し手を入れましたが、ほぼそのまま。久しぶりに、飾り気のない会話劇を上演しました。地味だし、物語も壮大ではないけれども、観るたびに新しい発見がありました。俳優人も僕も、ほぼ戯曲に想定された40歳前後でして、いいメンバーで取り組めたと思います。日替わりゲストの、史朗さん、平山くんも本当によかった。ぜひいろいろな土地を回りたいなあと思います。


『水飲み鳥』
(前列左より) 古市裕貴 洪明花 森宮なつめ 泉陽二
(後列左より) 安木一之  平山寛人(鵺的)  鈴木史朗(A.C.O.A.) 

※後列3名は日替わりで同じ役を演じます

安木 18火 19:30/ 20木 19:30 /23日 13:00
鈴木 19水 19:30/ 20木 15:00/ 22土 15:00
平山 21金 19:30 /22土 19:30/ 23日 17:30


だって本当のことばかりじゃ疲れない?「ああ、こいつ、ちょっと大げさに言っているな」とか「この話嘘だな」って思っても、それを詮索しないこと。

友人の交通事故をきっかけに、久しぶりに集まった高校の同級生たち。「この友情は永遠だね」と誓ったあの日から20年がたち、今、お互いの表情の中に何を感じるだろう。羨望?嫉妬?それとも友情?2009年、東京、静岡、広島で初演。【60分】



『溺愛』
 (新作)

(12時の方向より時計回りに) 
久保明美 小助川玲凪(K・A・G/一徳会) 宮嶋美子 
北見直子 宍戸香那恵 + (写真にうつっていないが) 安木一之

お願い、今ならまだ大丈夫。気付いて。振り返って気付いて。立ち止まって叫んで。心を沈めて考えて。嘆かないで、行動して。そうすれば、きっと、自由になれるから。


あらゆる嘘を積み重ね、同僚から金を騙し取るが満足せず、保険金目的の殺人まで実行。いわゆる看護婦による福岡保険金連続殺人事件。この事件をモチーフに、欲望のために、個が個を裏切り、人間らしさを失っていく様を描く。新作。【50分】

照明 福田恒子 音響 三木大樹 美術・舞台監督 鳴海康平(第七劇場) 衣装 兼松光
文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業)
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