アイアムアンエイリアン

作・演出 山田裕幸

#2012年3月13日~18日

#下北沢シアター711

文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)

2012年の初演以降、最も上演を重ねている作品です。

あの日から一年がたちました。私に一体何ができるだろうと思って、東北まで走ろうと思いました。もちろん一日で走るわけじゃありません。コツコツ距離を積み重ねていくんです。走るのが面倒だったり、途中で苦しくなったら亡くなった人のことを思い出します。「私はこうして生きて走ることができる。それはどんなに幸せなことだろうか」と都合のよいことを考え、自分を奮い立たせてきました。
お陰で心肺機能が格段に向上し、体重も減り、食生活も大きく改善されました。
私にとってのこの一年は、そんな風に過ぎていきました。もちろん、他にも色々なことを感じたり、考えたりしましたが、結局私ができることは、瓦礫撤去のボランティアでも、寄付でもなく、私が私自身のために走るという行為でした。
これが正しいか正しくないか、そういったことを問いたいわけではありません。私という個人が、どんな方法で社会と関わっていくのか、どこの部分の責任を負い、どのような役割を与えられているのか。テレビからの映像、停電、混乱、不安、様々なことが断片的な記憶として残っていますが、私は震災直後に劇団員が客演していた公演を観に行ったときの、よく晴れた空のことを何より覚えています。
これからも走り続けるでしょう。あの日の空の色を忘れないでしょう。多分それが今の私にできることだろうと思うのです。
(文 初演時当日パンフレットより/山田裕幸)

上演記録

  • 2022年3月6日藤枝市生涯学習センター / 藤枝ノ演劇祭 参加
  • 2021年11月19日〜21日白子ノ劇場
  • 2016年2月27日・28日宮崎公演(宮崎県立芸術劇場 / みやざきの舞台芸術シリーズ)
  • 2014年9月12日・13日韓国公演(Howon university Howon Art Hall)
  • 2013年11月25日・29日・30日・12月1日学習院女子大学パフォーミングアーツフェスティバル 参加
  • 2012年12月学習院女子大学プロデュース公演として上演
  • 2012年3月13日~18日〈初演〉 下北沢シアター711
配役(2012年3月〜2016年2月)
上演日 2016年2月 2014年9月 2013年11月 2012年12月 2012年3月
会場 宮崎公演 韓国公演 学習院女子大学 学習院女子大学 シアター711
男1 小林至 小林至 小林至 新尉ジン 平家和典
男2 古澤光徳 古澤光徳 古澤光徳 古市裕貴 古澤光徳
男3 古市裕貴 古市裕貴 國枝大介 宮崎ゆうすけ 小林英樹
男4 ヤストミフルタ ヤストミフルタ ヤストミフルタ ナカムラユーキ ナギケイスケ
男5 ナギケイスケ 山田裕幸 古市裕貴 八木光太郎 古市裕貴
女1 平佐喜子 北見直子 北見直子 太田圭 洪明花
女2 洪明花 竹原千恵 齋藤緑 主浜はるみ 久保明美
女3 鈴木亜由子 水田由佳 鈴井唯 新井愛美 若林瑞季
女4 水田由佳 平佐喜子 水田由佳 水田由佳 北見直子

この作品は、今年の3月にユニークポイントの公演として、下北沢の劇場で上演されました。今回、感劇市場、初のプロデュース公演として再演できたことを嬉しく思っています。
この作品に出演しているのは、公募で集まった俳優と、ユニークポイントの劇団員、そして私が声を掛けた数名の俳優です。キャリアも、出自も異なるメンバーではありますが、この作品にはいい効果を与えていると思います。
本作品は「臓器移植」という問題を扱ってはおりますが、3・11後のあってはならないことが起こってしまった事後の世界について書いている作品です。
昨今の政局の混迷を横目で見ながら、しかし私たちは選択し、生きていかなければならないのだとの思いを強く持っております。ぜひ、1時間15分の議論を通じ、観客のみなさまも「選択する」勇気と同時に「恐怖」について、一緒にお考えいただければ幸いです。
本日はご来場、誠にありがとうございました。
最後までごゆっくりお楽しみください。
(文 2012年12月上演当日パンフレットより/山田裕幸)

韓国のみなさん、こんにちは。
私たちは今回、3度目の韓国公演に、この作品を上演することにしました。
この作品は、日本で大きな地震、津波のあった1年後に初演しました。
あのとき思ったのは、いくら私たちが想像の限りをつくしても、しょせん、当事者にはなれない、というジレンマでした。
あの地震の記憶は日に日に薄れていますが、表現者として、そのジレンマだけは忘れないでいようと思います。そして韓国の皆様にも、きっとこのジレンマはきっとご理解いただけると思っています。
この作品は、ほとんど俳優に大きな動きがありません。ちょっと字幕を読むのに疲れちゃうかもしれませんが、最初の設定だけご理解いただければ、わかりやすいと思います。
議論の方法や、受け答えの仕方は、国民性が出やすい部分だとも思いますので、その辺りもお楽しみいただければ幸いです。
今回、お世話になったすべての方に感謝します。
ありがとうございました。最後までお楽しみください。
(文 韓国公演当日パンフレットより/山田裕幸)

宮崎のみなさん、こんにちは。また今回、みやざきの舞台芸術シリーズに取り上げていただき、このような機会を与えてくださった劇場のみなさまに感謝します。
この作品は、震災のあったちょうど一年後に、劇団の新作として下北沢の劇場で初演を迎えました。以後、キャストを変えながら上演を繰り返してきました。私自身、劇作家・演出家として活動してきましたが、あの出来事は作品作りに大きな影響を与えました。何もできないことにいら立ちました。
偶然あの場所に住んでいたという理由だけで住む場所を奪われたり、大きな津波に巻き込まれ命を落とされた人々。まるで生きている私たちこそが異物者のような気がして、この作品を書きました。震災から5年たちましたが、この作品を上演するたびにそんな記憶がよみがえります。
忙しい日々の生活の中で、こうして劇場にいらしたみなさんと作品を通じ少しでも命について考えることができれば、演劇にもまだ可能性はあるでしょう。ごゆっくりご覧下さい。
(文 宮崎公演当日パンフレットより/山田裕幸)

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